子どもの頃、学校の保健室はどんな場所でしたか?
私にとって、保健室は「いつでも行ける秘密の場所」でした。よく体調を崩していた私は、自然と「保健室で休む」ことが多かったのです。
うつらうつらとしているだけで自分自身に戻ることができて、「大丈夫。戻ろうかな」という気持ちになったものでした。多くを聞かず、静かにそばにいてくれる保健室の先生の存在があってこそ、安心を取り戻せたのかもしれません。
感じ方は人それぞれだとは思いますが、私と同じように保健室が安心できる場所だった人も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、保健室をとおして子どもたちに安心を届けようというプロジェクトです。
ぷるすあるはが保健室に絵本を届けるプロジェクトPart3を実施中
精神疾患や心の不調を抱えた親を持つ子どもたちを応援し続けているNPO法人ぷるすあるは。子どもたちの心に寄り添い、「一人じゃないよ」「話してもいいんだよ」「あなたのせいではないんだよ」など、温かいメッセージを届けています。
その活動について、soarでは以前、代表の北野陽子さんと、制作担当の細尾ちあきさんへのインタビューという形で紹介しました。
そのぷるすあるはさんが、現在「絵本で届ける保健室あんしんプロジェクト Part.3 アルコール依存症編」を実施中。これは誰でも簡単に参加できる子ども支援のひとつ。
保健室という場所だからこそ、ひっそりと出会った絵本で気持ちが救われる子ども達がいます。
身近だけどよく分からない「アルコール依存症」という病気
プルスアルハ作の絵本シリーズのうち、1冊を全国の小・中学校の保健室においてもらおうというこのプロジェクト。
大好評だったPart.1(対象絵本『ボクのせいかも…─お母さんがうつ病になったの─』110冊をお届け)、Part2(対象絵本『お母さんどうしちゃったの…─統合失調症になったの・前編─』80冊をお届け)に続いて、今回の対象絵本は『ボクのことわすれちゃったの?─お父さんはアルコール依存症─』となります。
今回お届けする『ボクのことわすれちゃったの?』は、お父さんがアルコール依存症になってしまったハルくんの物語。
ハルくんは大好きなお父さんとキャッチボールをしたいのに、お父さんはお酒を浴びるように飲んでその約束を忘れてしまいます。お母さんの涙、お姉ちゃんの無関心、そして自分の中での葛藤に苦しむハルくん。お父さんの病気を理解し、家族一緒に回復へと向かって行くまでの道のりが、細尾ちあきさんの描く独特の世界観の中で、描かれていきます。
そして、後半には、精神科医である北野陽子さんにより、依存症の解説、子どもへの接し方についてのヒントが丁寧に書かれています。
アルコール依存症は、私たちが思うよりもずっと身近な病気です。誰でもなる可能性があるものでありながら、社会的に「適切な治療が必要な病気」として見られていないところがあります。
そのため、「本人がだらしがないから。意思が弱いから」と誤解されやすく、本人だけでなく家族や子どもたちも追い詰められてしまいがちです。
本書は、絵本のストーリーだけでなく、精神科医の専門的な解説を通して、学校の先生や養護教諭、スクールカウンセラー、保護者など、大人にとっても子どもへのケアの指針となってくれる貴重な1冊です。
ご興味を持たれた方は、ぜひ、お近くの小・中学校、ご自身の母校などに絵本を届けるプロジェクトにご参加ください。
フォームから簡単に申し込める子育て支援
参加方法は、①ぷるすあるはに寄付をする(学校を指定するか、ぷるすあるはに一任する)方法と、②自分で絵本を購入して直接近くの学校に届ける、の2つの方法があります。
①「ぷるすあるはに寄付をする」では、HPの専用フォームより、必要事項を記入の上、1冊あたり3500円の寄付で、何冊でも学校に送ることができます。送り先の学校は、指定することもできるし、ぷるすあるはにお任せするのでもOK。プロジェクトに共感した方であれば、誰でも、手軽に参加できる方法です。
②「自分で絵本を購入して届ける」は直接、小・中学校にコンタクトを取り、実際に本の内容やプロジェクトを説明しながら、届ける方法。こちらは、インターネット書店や一般書店で本を購入後(本は1冊、2,268円(税込)です)フォーマットから申し込むと送られてくるプロジェクトキットを元に、学校の先生にお届けします。こちらの方法だと、お子さんが通う学校の担任の先生や養護教諭に直接お話ができるので、子どもたちを安心させる手助けをしたい、という思いをダイレクトに伝えることができます。
このプロジェクトに共感し、今回は私も参加させていただきました。私自身は、②の直接届ける方法で、自分の子どもが通う小学校に本を届けました。まず、都内の大型書店で本を取り寄せてもらい購入。その間に、フォーマットから申し込むと2週間ほどで、ぷるすあるはからプロジェクトキットが届きました。
対象となる絵本は、子どもが読んでももちろんいいのですが、親がアルコールなどの依存症になって辛い思いをしている子に、どう接すればいいかという大人の指針ともなるもの。子どもの心理や接し方のヒントを見つけるためにとても役立つということが、キットを通して説明することができます。
届けることで、“私”もつながることができる
私の場合は、小学校の担任の先生を通じ、保健室の先生(養護教諭)にお話をすることができました。「アルコール依存症」という特定の疾患についての本なので、「すぐに該当する子どもに届けられるわけではないかもしれませんが」と言いながら、先生はとても興味を持ってくれました。
さらに、「うつ病」や「統合失調症」など大人の心の病気だけでなく、「不登校」「親のケンカ」「感覚過敏」といった子ども自身の気持ちを知る絵本シリーズもあるということも説明すると、校長先生も大変関心を持って聞いてくださいました。学校での子どもたちの様子や、それに対して先生たちがどのような取り組みをされているか、ということも話し合えたことも嬉しかったです。このプロジェクトがきっかけで、自分自身の学校や地域への関わり方も一つ変わっていった気がします。
誰にでもできる「手助け」。行動することで思いは届きます
以前紹介したぷするあるはさんの記事はとても多くの方に読んでいただけただけでなく、「私も子どもの頃から、親のことでもやもやを抱えてた」「こんなふうに、自分の気持ちになって表現してくれて、しかも地域のケアに繋いでくれる活動が私の時にもあったらよかった」など、心の奥にずっと持ち続けていたさまざまな思いを話してくださる方もたくさんいました。 また、今、そうした思いを抱えている子ども達の役に立ちたい、と記事をシェアしてくださる方も大勢います。
1冊の絵本を届けることで、子どもたちの気持ちを少しでも和らげることができるかもしれません。子どもが必ず在籍する学校で、まず先生方の理解を通して、子どもたちへ安心を届けていきましょう。
日本全国に100冊届けるのが今回の目標です。エントリー期間は2016年11月27日(日)24時まで。
「自分も何かやってみよう」と思われたら、ぜひトライしてみてください。
関連情報
NPO法人ぷるすあるは ホームページ
プロジェクトページ ぷるすあるは 絵本で届ける保健室あんしんプロジェクトpart.3「アルコール依存症編」 お申し込み・詳細はこちら